波待ちをしていると気持ち悪くなってくる。あれは体質の問題ではなく、仕組みのうえで起きることです。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、乗り物酔いを起こす刺激について「発進・停止の反復、スピードの変化、前後・左右・上下(最も酔いやすい刺激)・回転」と挙げています。
波待ちは、まさにその上下動をずっと受け続けている状態です。しかも視線の先は動く水面ばかり。条件がそろっています。

なぜ気持ち悪くなるのか
同学会の説明を引きます。
人のからだは倒れたりしないように、自動的に姿勢を保つ調整機能(反射)があり、これを平衡機能といいます。この働きには内耳が重要な役をしています。(中略)慣れない刺激がくり返されると情報過多となり、脳が混乱して、自律神経に異常な信号を送ってしまいます。
ポイントは「情報過多」という言葉です。内耳が受け取る揺れの情報が多すぎて、脳の処理が追いつかなくなる。その結果、自律神経に誤った信号が送られます。
出てくる症状も挙げられています。生あくび、冷や汗、顔面蒼白、手足の冷感、気持ち悪さ。そして吐く。海の上で生あくびが出たら、それはもう始まっているサインです。
出典:一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「乗り物酔い」。2026年9月11日に確認しました。
サーフィンで条件が重なる場面
編集部の中で酔いが出やすいのは、だいたい次の場面です。
| 場面 | 重なっている条件 |
|---|---|
| 長い波待ち | 上下動を受け続ける。乗る動作で気がまぎれる時間がない |
| うねりが大きく、風で水面がざわついている日 | 揺れの向きが不規則になり、情報量が増える |
| GoProやウォッチを操作しているとき | 手元の小さい画面を見ると、視線が揺れを追わなくなる |
| 寝不足・水分不足の日 | 体調の側が整っていない |
3つ目は、学会の予防リストと重なります。同ページは乗り物酔いの予防として「本を読まない。遠くの景色を見る」を挙げています。手元を見るのをやめて遠くを見る、という点で、画面操作は逆の行動になります。

入る前と入っている間にできること
前日と当日の準備
学会の予防リストの先頭は「前の日はよく眠る。食べすぎをしない」です。海に置き換えても同じで、寝不足の日は出やすくなります。
食事は、空腹でも満腹でも良くありません。食べすぎを避けて、海に入る少し前までに済ませておく。水分も入る前に取っておいてください。
お酒については、前日の深酒や当日の飲酒を私たちは避けています。一般的にも、体内にアルコールが残っている状態は酔いやすいと言われています。
海の上では、遠くを見る
いちばん効くのがこれです。手元や足元ではなく、水平線や岸の景色を見る。学会の「遠くの景色を見る」を、そのまま海でやる形になります。
カメラやウォッチの操作は、上がってからまとめてやる。これだけで変わります。
穏やかな日から慣らす
学会の説明では、酔いの引き金は「慣れない刺激がくり返される」ことです。逆に言えば、慣れの要素があります。
始めたばかりの時期に波待ちで気持ち悪くなるのは、このためです。うねりの小さい日に短い時間から入って、体を慣らしていく。そのほうが早く落ち着きます。
薬を使う場合
症状が重い場合は、酔い止めの薬という選択肢もある。学会のページにも、医師に相談して酔い止めの薬を飲んでおく、という方法が載っています。市販薬には眠気などの影響もあるので、使うかどうかは医師か薬剤師に相談してください。
始まってしまったら
学会の答えは明確です。「乗り物からおりてしまうのが最もよい方法」。海なら、上がることです。
私たちの経験でも、入ったまま回復することはほとんどありません。その日はあきらめて上がるほうが、結果的に次の海に早く戻れます。
上がったあとは、同ページが挙げている方法が使えます。横になって、ウェットスーツのファスナーや首元をゆるめる。ゆっくり腹式呼吸をする。頭を冷やす。日陰で風の通る場所に移ってください。
水分を取り、落ち着くまで安静にします。しばらくして戻らない、あるいは症状が強い場合は、医療機関で診てもらってください。

よくある質問
船に酔わないのに、サーフィンで酔うのはなぜですか
受ける揺れの種類が違います。学会の説明では、上下の動きが最も酔いやすい刺激とされています。波待ちはその上下動を、体ひとつで長時間受ける状態です。船の甲板よりも揺れが直接伝わります。
続けていれば酔わなくなりますか
慣れの要素はあります。学会の説明が挙げているのは「慣れない刺激がくり返される」ことなので、慣れていけば起きにくくなる方向です。ただし体調やその日の海況で戻ることもあります。編集部にも、長く乗っていて今でも出るメンバーがいます。
酔いやすい人は向いていないのでしょうか
そうは考えていません。出やすい条件がわかっていれば、避け方も決まります。遠くを見る、画面を触らない、穏やかな日に短く入る。このあたりを先に押さえておけば、海にいる時間は増やせます。
まとめ
サーフィン酔いは、上下動という最も酔いやすい刺激を長く受けることで起きます。内耳からの情報が多すぎて脳の処理が追いつかない、という仕組みです。
対策は3つ。寝不足と食べすぎを避けて入る。海の上では遠くを見て、手元の画面を触らない。うねりの小さい日から慣らす。
そして始まってしまったら、上がる。これが学会の示す最善手でもあります。
※ この記事の内容は一般的な目安です。症状には個人差があります。強い吐き気やめまいが続く場合、繰り返す場合は、耳鼻咽喉科などの医療機関を受診してください。薬の使用は医師か薬剤師に相談してください。
この記事について
サーフィン初級者から20年以上のベテランサーファーまで在籍する「nanazero編集部」が企画・執筆を行いました。
この記事の根拠 酔いが起きる仕組み、症状、予防と対処の方法は、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「乗り物酔い」で確かめました(2026年9月11日)。引用は原文どおりです。酔いが出やすい場面と、上がる判断のタイミングは、編集部が海で実際に経験してきたことです。
文章校正や誤字脱字のチェックにAIを活用しています。サーフィンの経験・体験談は、編集部メンバーが実際に体験した一次情報です。編集部についてはこちらにまとめています。
