こんにちは、nanazero編集部です。サーフボードに使われる素材『EPS』と『PU』の違いが何かご存知ですか?

これらはサーフボードのコア素材を指し、それぞれ異なる特性を持っています。適切なボードを選ぶことは、サーフィンの楽しさを大きく左右します。

この記事では、サーフボードの主要な素材であるEPS(エクスパンダブルポリスチレン)とPU(ポリウレタン)の特性と違いを、初心者にも分かりやすく解説します。

1. EPSとPUの基本的な違いとは

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サーフボードにはデザイン、長さ、幅、厚み、ボリュームの5つの要素で選ぶ方法が一般的ですが、サーフボードの性能は他にも多くの要素が関わってきます。

その一つにコアフォーム(ブランクス)の素材の違いがあります。サーフボードは一般的にコアフォームと言われる素材をサーフボードの形に削り、樹脂を塗り、クロスを巻いて仕上げます。

コアフォームの素材に『EPS(エクスパンダブルポリスチレン)』や『PU(ポリウレタン)』を使用しますが、サーフボードを形づくる大部分がコアフォームになるので、素材を変えることでサーフボードの性能にも大きく影響します。

本記事では素材の違いで、サーフボードにどのような影響があるのかを解説していきます。

1.1 サーフボードの素材について

サーフボードにはさまざまな素材が使われていますが、現在でも多くのサーフボードに使用されているのはEPS素材とPU素材になります。

1.2 サーフボードの重さについて

EPSサーフボードとPUサーフボードを比べる時に、必ず『重さ』の比較が行われますが、重さは波のコンディションや、サーファーのライディングのパフォーマンスに影響するためです。

またサーフボードは波の上を滑っていくため、水から浮く力(浮力)が重要な役割を果たします。

サーフボードは軽くなればコントロール性能が上がりますが、浮力の影響を受けやすくなると繊細なコントロールスキルが必要になります。

またリーフブレイクのように急激に掘れ上がる波や、ビッグウェーブなどではサーフボードに適度な重さが必要とされています。一概に軽ければ良いというものではありません。

重さがある方が重力の力でスピードを付けやすく、安定性にも繋がります。しかし、重さがあるとパドリングの漕ぎ出しが遅くなったり、ボードの持ち運びに不便さを感じるなどのデメリットもあります。

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サーフボードが軽いとパドリングの漕ぎ出しがスムーズになり、面の整ったコンディションの場合は波キャッチを素早く行うことができます。また車からの出し入れ、自宅の保管、持ち運びに軽さは大きなメリットとなります。軽いことのデメリットとしては風のあるコンディションでは海面のコブを拾いやすくなり、コントロールが難しくなるという点です。

サーフボードの重さと軽さは一長一短があるため、コンディションや目的に合わせて使い分けることが大切です。

2. EPSサーフボードの特徴とメリット

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EPSサーフボードは軽量さ、優れた浮力、優れた耐久性で知られています。EPS(エクスパンダブルポリスチレン)は、いわゆる発泡スチロール(ビーズ法)のことです。

簡単にイメージしやすいように『EPSサーフボード=発泡スチロール』と覚えておきましょう。

この章ではEPS製サーフボードのメリット・デメリットや、EPSサーフボードが向いているサーファー、EPSサーフボードが向いている波質について解説します。

2.1 EPSサーフボードはPUと比較して12%軽くなる

EPSフォームは非常に軽量で、その密度は一般的に16から32キログラム/立方メートル (kg/m³) の範囲です。この低密度は、空気を多く含む発泡構造に由来します。このため、EPSフォームは非常に軽い素材です。

PUフォームはEPSフォームよりも密度が高く、一般的には40から100キログラム/立方メートル (kg/m³) の範囲です。PUフォームはよりコンパクトなセル構造を持ち、これが重量に反映されます。

EPSフォームを使用したサーフボードがPUフォームを使用したサーフボードに比べて約12%軽くなるという報告は、EPSとPUの密度差に基づく計算によるものです。EPSの密度がPUに比べて大幅に低いため、全体としてサーフボードの重量が軽減されることになります。

サーフボードの体積が大きくなるほど影響が顕著になるため、EPS素材のミッドレングスやロングボードは、PU素材と比べて非常に軽いと感じられるでしょう。

2.2 EPSサーフボードはPUと比べて耐久性が高い

EPSサーフボードはPU素材と比べてコアフォームの密度が高く、耐久性を高めることができます。ただしコアフォームの素材だけで耐久性が高くなるわけではなく、その後のファイバーグラスをサーフボードに巻く工程でも耐久性が変わります。EPS素材だからと言って大きく耐久性が高くなるわけではなく、その後の加工によって耐久性が変わることを知っておく必要があります。

2.3 EPS素材はPU素材と比べて環境負荷が小さい

EPS素材がPU素材よりも環境負荷が小さい理由を『エネルギー消費』『リサイクルの容易さ』『耐久性と寿命』の3つの観点から解説します。

2.3.1 エネルギー消費

EPSフォームの製造プロセスは、一般的にPUフォームの製造よりもエネルギー効率が良いとされています。EPSは軽量であり、製造に必要なエネルギー量が少なく、温室効果ガスの排出量も相対的に低いです。

2.3.2 リサイクルの容易さ

EPSはリサイクルが比較的容易であり、収集後に物理的に再加工して新たな製品に生まれ変わることができます。このプロセスにより、EPSフォームの廃棄量を減らし、資源の有効活用が可能になります。

2.3.3 耐久性と寿命

耐水性が高く、長期間にわたって性能を保持することができるため、製品の寿命が長くなり廃棄物の発生を抑えます。

2.4 nanazero がEPSサーフボードを選んだ理由

nanazero はサーファーと地球環境のことを考えて、なるべく環境負荷を抑えるように素材選びにこだわりました。

詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

nanazero:サステイナブルな取り組みについて

3. EPS サーフボードのデメリット

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EPS素材のサーフボードは軽く、水から浮く力が強いため、風が強いコンディションの場合は風の影響を受けやすいと言われています。

また、EPS素材はPU素材と比べて原材料が高価になるので、一般的にはPU素材のサーフボードよりも高価になります。このようなデメリットについても解説します。

3.1 EPSサーフボードは1回あたりのリペアコストが高くなる

EPSサーフボードの修理は、素材の性質上、特別な技術と材料が必要です。EPSは損傷部分から水分を完全に除去した後、修理を行う必要があります。

このプロセスは時間がかかり、特別な技術を要するため、1回あたりの修理費用が高くなります。

その代わり壊れにくく割れにくいため、リペアの回数はPUサーフボードよりも少なくて済む可能性もあります。

3.2 EPSサーフボードは熱に弱い

EPSは発泡スチロールとも呼ばれ、スチレンモノマーからポリマー化によって作られます。EPSの構造は、小さなビーズが蒸気で膨張して結合されることで形成されます。この発泡プロセスにより、EPSは非常に軽量でありながらも優れた浮力を持つことができます。しかし、この構造は熱に非常に敏感であり、高温にさらされるとビーズ間の結合が弱まり、形状が変化したり強度が低下する原因となります。

EPSサーフボードが熱に弱い主な理由は、そのセル構造が熱によって膨張や収縮しやすく、物理的な形状の安定性が低下するためです。特に、EPSは水蒸気を使用して発泡させるため、高温下ではこの発泡プロセスが逆転し、セル構造が損なわれやすくなります。一方で、PUフォームの密なセル構造と化学的結合は、熱による影響を受けにくく、形状の変化が少ないため、より熱に強いと言えます。

3.3 EPSサーフボードは価格が高い

EPSサーフボードの製造過程はPUサーフボードに比べて技術的に複雑で、コストがかかります。EPSフォームは発泡スチロールビーズを加熱し、膨張させて成形します。このプロセスには精密な温度管理と時間が必要で、高品質なEPSフォームを生産するには特別な設備と技術が求められます。さらに、EPSサーフボードはエポキシ樹脂でコーティングされることが多く、このエポキシ樹脂はPUサーフボードに使用されるポリエステル樹脂よりも価格が高い傾向にあります。

4. PUサーフボードの特徴とメリット

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PU素材サーフボードは現在のスタンダードなサーフボードの素材として使用されています。PUとはポリウレタンのことで、合成ゴムやウレタンフォームのことです。ポリウレタンも幅広く工業製品に使われており、建築資材の断熱フォームやシューズのゴムソールなどに使われています。

『PUサーフボード=合成ゴム』とイメージすると分かりやすいでしょう。

この章ではPU素材のサーフボードのメリット・デメリットや、PUサーフボードが向いているサーファー、PU製サーフボードが向いている波質について解説します。

4.1 PU素材のサーフボードは価格が安い

PUサーフボードの製造プロセスは、EPSサーフボードに比べて比較的シンプルで、コストが低く抑えられます。PUフォームはポリウレタン樹脂と発泡剤を反応させて発泡させることで作られます。このプロセスは設備投資や技術的な複雑さが少なく、大量生産にも向いています。また、PUサーフボードはポリエステル樹脂で仕上げられることが多く、このポリエステル樹脂はエポキシ樹脂に比べて安価で入手しやすいため、製品の価格を抑えることができます。

またPU素材は、EPS素材に比べて原料コストが低く、広く利用されているため供給も安定しています。その結果、PUサーフボードの生産コストはEPSサーフボードに比べて低く抑えられ、消費者にとっても手頃な価格で提供されます。

4.2 PU素材のサーフボードはリペア費用が安い

PUサーフボードの修理は比較的簡単で、一般的なサーフボード修理技術で対応可能です。素材が柔軟であり、修理用のリペアキットも安価なため修理がしやすく、費用も抑えられます。

4.3 PUサーフボードはフレックス性が高い理由

PU(ポリウレタン)フォームは比較的低密度で、その分子構造が提供する柔軟性が高いです。PUフォームは柔軟なポリオールと硬いイソシアネートが結合してできており、この化学的組成がフレックス特性を高めることに寄与します。

PUの分子構造には、可動性を持つ連結部があり、これが物理的な力に対して柔軟に応答することを可能にします。このため、PU製のサーフボードは曲がりやすく、波に対する反応性が高いと言われます。

5. PU(ポリウレタン)素材のデメリット

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PUサーフボードは、クラシックな乗り心地と性能で多くのサーファーに愛されていますが、耐久性の問題と環境への負荷がデメリットとして挙げられます。

5.1 PUサーフボードはEPSと比べて耐久性が低い

PUフォームは、EPSフォームに比べて衝撃吸収性が低い場合があります。これは、PUフォームがEPSフォームよりも密度が高く、硬いため、衝撃によるダメージが直接的にコアに伝わりやすいからです。その結果、ディング(へこみ)やクラックが発生しやすく、修理が必要になるケースがあります。

PUフォームは、損傷があると水を吸収しやすい性質があります。水がコア内に侵入すると、サーフボードの重量が増加し、パフォーマンスが低下します。また、水の侵入はサーフボードの内部構造を弱め、耐久性をさらに低下させる可能性があります。

5.2 PUサーフボードはEPSと比べて環境負荷がかかる

PUフォームの製造過程では、化学物質が使用され、有害な排出物が生じることがあります。これらの化学物質は環境への悪影響を及ぼす可能性があり、サステナビリティに関心が高いユーザーからは避けられがちです。

PUフォームはEPSフォームに比べてリサイクルが困難です。EPSフォームは比較的簡単にリサイクルが可能で、再利用されることが多いですが、PUフォームのリサイクルプロセスは複雑でコストがかかるため、廃棄されることが多く、環境負荷が高いとされています。

6. 初心者におすすめのサーフボード素材選び

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サーフボードを選ぶ際に、EPS(エクスパンダブルポリスチレン)とPU(ポリウレタン)の素材の違いを理解することが大切です。

EPSサーフボードは軽量で反発力が高い一方で、PUサーフボードは重量感があり、柔軟性に優れています。

自分のサーフィンの環境に合わせて選ぶと良いでしょう。

6.1 初心者でも波をキャッチしやすいサーフボードとは?

EPSは軽量で浮力が高いため、波をキャッチしやすくなります。また、EPSは衝撃に強く、耐久性が高いのが特徴です。

初心者がEPSサーフボードを選ぶメリットとしては、軽さと高い浮力によって、初心者が扱いやすく、ステップアップが容易になることです。

PUサーフボードは安価なためコスパ良くサーフィンを楽しむことができます。

6.2 耐久性が高いサーフボードを選ぶべき理由

初心者は海だけでなく陸上でもサーフボードを扱う際に、誤ってぶつけてしまうことがあります。このため、耐久性の高いサーフボードが推奨されます。

EPSはPUに比べて耐久性が高く、衝撃に強いため、初心者に適しています。ぶつけても割れにくい特性があります。

nanazeroはEPS素材に加えて、ウッドスキンを使用しています。ウッドスキンはサーフボードに追加の強度を提供し、耐久性をさらに高めます。

6.3 持ち運びや保管が楽なサーフボードがオススメ

サーフボードはサイズが大きくなると、その分重量が重くなり、持ち運びも大変になるので、意外と海以外の場所で傷つけてしまうことが多いです。

EPS素材のサーフボードはPU素材のサーフボードと比べて軽量になります。サーフボードが大きくなるほどその恩恵を得られます。

軽いということは、サーフィンの恩恵もありますが、持ち運びや保管などのシチュエーションでも非常に大きなメリットになるので、EPS素材のサーフボードは初心者にオススメできます。

7. まとめ:あなたに合ったサーフボード素材の選び方

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サーフボードにはさまざまな素材があり、世界中のサーフボードブランドが素材の研究開発を続けています。

日進月歩ではありますが、現在サーフィン市場で主流になっているのは『EPSサーフボード』と『PUサーフボード』と覚えておくといいでしょう。

本記事でEPSとPUの特徴、メリットやデメリットについて気づきを得られたら幸いです。

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ヒガシーサー(@higashisacom)サーフィン歴20年。独学で上達しなかった経験から、科学的メソッドに基づいて練習する方法を実践。たった3ヶ月で上達できた方法を一般サーファー向けに分かりやすく解説している。Instagram フォロワー数 34,000人、YouTube チャンネル登録者数 16,000人。ブログ:https://pocketsurf.jp
2月 10, 2024